「読めた」の次に、自分の言葉で「なぜ?」

エリム教育研究所 / 教育論文を読む

研究で確かめられたことと、そこから考えられる実践のヒントを分けて紹介します。

読めた、その次は?

教科書を読み終えると、内容が頭に入ったように感じることがあります。でも、なぜそうなるのかと聞かれると、説明が止まることもあります。今回は、文章の意味を自分で説明するよう促した研究を紹介します。声を出すこと自体ではなく、知識のつながりを考える活動に注目します。

自己説明とは何だろう

ここでの自己説明は、読んだ文をそのまま繰り返すだけの音読とは異なります。その文が何を意味するか、すでに知っていることとどうつながるかを考え、言葉にする活動です。ただし、自分の言葉なら何でも正しいわけではありません。説明の内容を確かめることも大切になります。

小規模な研究を丁寧に読む

紹介するのは、チーらが一九九四年に発表した研究です。参加者は、公立学校の第八学年の生徒二十四人で、生物学のコースをまだ履修していませんでした。少人数の志願者による研究です。大きな教育制度全体の効果としてではなく、具体的な条件の比較として読み進めます。

教材は体の循環系

学習したのは、循環系を扱う百一文の教材です。血液が体を巡る仕組みなど、部分どうしの関係を理解する必要がある内容でした。単語を一つずつ覚えるだけではなく、仕組みをつなげて考える教材です。この内容の特徴も、結果を別の教科に応用するときの大事な条件になります。

教材:循環系についての101文/内容の特徴:部分どうしの関係や機能を考える
図1:教材は体の循環系。本文を説明するための独自図。論文図の転載ではありません。

説明を促す条件

自己説明を促す条件には十四人が参加しました。各文を読んで、その意味を説明するように求められました。さらに、二十二か所では機能を問う追加の質問がありました。自分だけで自由に独り言を言った条件ではなく、説明を引き出す働きかけを含んだ条件でした。

二回読む条件と比較

比較する十人は、同じ文章を二回読みました。研究では、学習前と学習後に知識や推論を測定し、正答割合がどれだけ変わったかを比べています。各セッションは少なくとも一週間ずつ離して行われました。同じ時間を使ったあらゆる学習法の順位を決める研究ではありません。

伸びを比べた結果

全体の正答割合の伸びは、自己説明を促す条件で三十二ポイント、二回読む条件で二十二ポイントでした。どちらの条件でも学習前から伸びており、その伸びは説明を促した条件のほうが大きくなりました。読み直しが無意味だったという結論ではないことを、先に確認しておきます。

正答率そのものではない

三十二と二十二という数字は、学習後の正答率ではありません。事前から事後へ、正答割合がどれだけ増えたかを表します。たとえば四十パーセントから七十二パーセントになれば、伸びは三十二ポイントです。この例の四十と七十二は説明用の数字で、原著の実測値ではありません。

研究の指標:事前から事後への割合の増加/説明用の例:40%→72%なら、32ポイント増
図2:正答率そのものではない。本文を説明するための独自図。論文図の転載ではありません。

難しい推論でも違い

難しい推論が必要な二つのカテゴリーでは、伸びが二十二・六ポイントと十二・五ポイントでした。説明を促した条件のほうが大きい結果です。文章の中の言葉を覚えるだけでなく、情報を組み合わせる問いでも差が見られました。ただし、この数字も事後の正答率そのものではありません。

言葉をつなぐ働きに注目

この研究を読む手がかりは、説明する過程で、文章の情報と持っている知識を結び付けることです。つながりが説明できないと、自分の理解の穴に気づく場合もあります。ただ、話した言葉の数を増やせば同じ結果になるとは言えません。何をどう説明したかが大切だと考えられます。

割付方法を言いすぎない

研究の紹介では、比較があるだけで無作為化実験と呼ばないことも大切です。今回確認した本文では、無作為割付は明記されていません。そのため、ここでは無作為化比較試験とは呼びません。少人数の条件比較から得られた結果として、言える範囲を慎重に扱います。

質問も含んだ効果

自己説明を促す条件には、各文の説明だけでなく、機能を問う追加の質問もありました。結果を、単に声を出す効果や、独り言だけの効果として紹介するのは正確ではありません。教師の問いかけや教材の支援を含む活動だったことを押さえ、家庭での使い方も考えます。

閉本の暗記試験ではない

もう一つ、測定の条件が重要です。事後テストでは、教材本文やノートを参照できました。何も見ずにすべてを暗記して答えた成績ではありません。資料を使いながら知識や推論を問う場面での結果です。検索練習の研究と同じ指標のように数字を並べて、優劣を決めることはできません。

事後テスト:本文やノートを参照できた/比較の注意:閉本の暗記テストとは条件が違う
図3:閉本の暗記試験ではない。本文を説明するための独自図。論文図の転載ではありません。

ここからは実践の提案

ここからは、研究をもとにした実践の提案です。まず短い段落や一つの式を読み、なぜそうなるか、前に学んだこととどうつながるかを説明してみます。全部の文で長く説明させる必要があるとは限りません。負担を見ながら小さく試す活動で、原著と同一の方法ではありません。

独自の算数例で考える

オリジナルの例として、長方形の面積の式を考えます。縦三センチ、横五センチなら、面積は三かける五で十五平方センチメートルです。そこで、なぜかけ算になるのかと問いかけます。式を読み上げるだけでなく、一平方センチメートルの正方形が並ぶ様子と結び付けます。

説明で見える理解

横に五個並ぶ一平方センチメートルの正方形が、縦に三段あるから、と説明できるでしょうか。図と式の対応が言えれば、何を数えているかが見えてきます。一方、縦と横を足すから、と言ったなら、周りの長さとの混同かもしれません。説明は理解を確かめる手がかりにもなります。

説明を確認して直す

説明の中に誤りがあったら、本人の言葉だからよいとして終わらせず、図や教材を使って確認します。どの正方形を数えているのか、一緒に指してもよいでしょう。間違いを指摘するだけでなく、説明を直す材料を渡します。この修正の方法は、今回の結果を踏まえた実践上の提案です。

問いを小さくする

なぜと聞かれても、何から話せばよいかわからない場合があります。そのときは、式の三は何を表すのか、図のどこが五なのか、と問いを小さくします。難しい説明を急に要求せず、つながりを一つずつ確かめます。こうした支援の量も、年齢や教材に合わせて調整する必要があります。

大きな問い:なぜ、この式になる?/小さな問い:3と5は、図の何を表す?
図4:問いを小さくする。本文を説明するための独自図。論文図の転載ではありません。

長さよりつながりを見る

立派な言い回しや長い説明だけを評価すると、説明すること自体が負担になりかねません。短くても、理由と結論がつながっているかを見ます。話すことが苦手なら、図に印を付けてから話すなどの方法も考えられます。ただし、表現方法の違いを今回の研究が比較したわけではありません。

わからないと言える時間

説明できない箇所が見つかることは、次に学ぶ場所が見つかることでもあります。すぐ正解を言えないことを責めず、ここがまだつながらないと言える時間にします。説明を求める目的は、子どもを試して追い込むことではありません。必要な支えを見つけ、理解を確かめ直すためです。

別の問題で確かめる

説明を一度言えたら、少し違う例でも考えてみます。縦と横の長さが変わっても、正方形を数える説明ができるでしょうか。この追加確認も実践の提案です。最初の言い回しを覚えただけなのか、関係を理解しているのかを知るために、説明と使い方を合わせて見ます。

読んだ意味を自分で結ぶ

今回の小規模な研究では、文章の意味の説明と追加質問を通じた活動で、二回読む条件より大きな伸びが見られました。独り言を増やすだけの話ではありません。次の学習では、一つだけ、なぜそうなるのかを自分の言葉で結び、教材で確かめてみましょう。説明を、理解を育て直す入口にします。

この研究を読むときの注意

  • 24人の小標本・志願者。無作為割付は確認本文に明記されないためRCTと呼ばない
  • 自己説明促進には機能質問も含まれる。単なる独り言の効果ではない
  • 事後テストでは本文やノートを参照できた。閉本暗記テストではない

ここで示した家庭・授業の例は、研究者がそのまま検証した手順ではなく、エリム教育研究所の提案例です。

参考資料

Chi, M. T. H., de Leeuw, N., Chiu, M.-H., & LaVancher, C. (1994). Eliciting self-explanations improves understanding. Cognitive Science, 18, 439–477.

一次資料の本文を読む(確認日:2026年10月18日)

出典の数値・図の位置:pp.452–453 / Figure 3周辺本文(PDF14–15頁)。対象と方法pp.450–451

編集方針:教育論文の読み方と編集方針

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